【第2夜・補足】
其の名が故に
これは、夕闇迫るニュータウンにて、
近くのディスカウントショップへと買い出しに行った翔真と響が、
偶然【そら】と遭遇した時の事。
時間軸としては、第2夜直前の物語である。
響 >「そういえば、そらさんって、最近はどの辺りによくいるの??」
そら >「…どのあたり、といわれても…」
響 >「あのね。住むところ無かったら、ウチ来る??澪もいるから、心配ないし、部屋も余ってるから(笑)」
そら >「――――――迷惑は、かけられません…(ふるふる)――――わたしは…静かに暮らして、いたいだけ…。」
響 >「静かに暮らそうにも、橋の下とかじゃ、何があるか解らないよ(笑)」
そら >「だいじょうぶです…もうすっかり、慣れました。それに…悪い場所じゃ、ないですよ」
翔真 >「だからそんな事に慣れんなって(苦笑)。」
そら >「―今日は…このあたりがよさそう……これ、濡れてないから…使えます」
翔真の言葉を聞いているのか聞いてないのか、
近くのスーパーからへちってきたタバコの納品用ダンボールを広げて、
布団らしき物にしている【そら】…ほとんど路上生活者である…。
響 >「・・・・・・」絶句してます
翔真 >「海を見るには悪くないが、寝床にするには問題ありだな・・・(溜息)お姫様は外で寝るのが好きなのかい?」
響 >「やっぱり家においでよ。」>そらさん
そら >「わたしは【そら】と呼ばれてます…から、空の下で眠るのは…あたりまえ、です(くすんだ微笑)」
翔真 >「(頭をかきながら)ふむ、なるほどね。」
響 >「あたりまえじゃないってば〜!!」>そらさん
そら >「―――――どうしてですか?なにか…気に障る事でも、言いました・・・でしょうか(きょとん)」
響 >「よっぽどの理由がない限り、そんな生活はしないんだよ。そらさんぐらいの年頃の女の子なら、とくにね。」>そらさん
そら >「――――では、理由はあります…でも、まだ出会ったばかりですし…言えません。」
翔真 >「確かにな・・・いや、むしろこっちが何か気に障るような事を言って無いか心配なんだけどな(苦笑)。」
そら >「多分…ないでしょう。少なくとも…わたしは、大丈夫です、から。」
響 >「・・・・・なるほどね。じゃあ、いつかは教えてくれるんだね(にっこり)」
そら >「多分…それまで、時間があれば…」
翔真 >「なんかあったら我慢しないで言ってくれよ・・・ちょっと失礼。」(そらの横に座る)
そら >「・・・・・・・・・あ(当惑気に)」
翔真 >「ん?そばに居られるのはイヤか?襲ったりしねぇから心配すんな(笑)。」
そら >「いえ、別に・・・問題は、ありません・・・」
翔真 >「どうしても嫌なら退くが・・・(おもむろに胸ポケットから飴(ミント系)を出して)食うか?」
そら >「…いえ、だいじょうぶ…です。でも…どうして、おふたりとも…わたしなどのことを、気に掛けられますか…?」
響 >「友人だからね。少なくともボクはそう思っているから。」>そらさん
翔真 >「気になったからに決まってるじゃねぇか。意識的に気にし始めたんじゃなくて最初っから気になってたんだよ。そこから先はいろんな理由があるけどな(笑)。」
そら >「―――――私の友達は・・・。」
翔真 >「・・・・・・」(黙って続きを待っている)
【そら】の脳裏に、とある風景がフラッシュバックする。
惨劇の過去。失われた時間。流れ去った、多くの時。
そして、結論は…いつも、ひとつ。
そら >「―――――みんな・・・・・・死に、ました・・・」
響 >「・・・そう・・」
翔真 >「・・・・・・そうか。」
そら >「わたしが友達になると・・・みんな、死んでしまう・・・だから、ひとりで・・・いました」
翔真 >「だから、これからも一人でいるつもりだと言うのか・・・?」
そら >「多分、そのほうが・・・いい・・・わたしは、もう誰も・・・傷つけてはならないのです」
翔真 >「なら、その意見は却下だな。」
響 >「そうだね。未来は不確定なんだから(笑)」
そら >「―――――――。」(聞いてます)
翔真 >「もしアンタがこの後どこか俺達の・・・いや、俺の知らない所で傷ついたら、俺は自分を許せない。ずっと後悔し続ける、守れなかった事を、力になれなかった事をずっと悔やむだろう。」
響 >「ボクは、傷つけ合っても、友人が一緒にいた方が良いと思うよ。」>そらさん
翔真 >「綾瀬も、凛も、多分似たような事は言うだろう。だけど・・・何より俺は、好みの女の子を守る為になら傷つく事くらいなんでもないさ(笑)」
そら >「―――――――。」(聞いてます)
翔真 >「何時もどこか寂しげな笑顔しか見せてくれなかったからな・・・俺達の事を思って、傷付いて欲しくないと思ってくれたから俺達から離れようとしたんだろう?」
そら >「・・・ひとつだけ、はっきりしていることが・・・あります」
響 >「なに??」
翔真 >「・・・何だ?」
そら >「わたしは・・・皆さんが思っているような・・・ものでは、ないと・・・いうこと」
翔真 >(苦笑)「俺達がどんな風にお前を思っていると考えているんだ?」
そら >「わたしは・・・そんな、大事にされたりするような・・・ものでは、ありません・・・」
翔真 >「微妙に正解だな(ニヤリ)。」
そら >「―――――?」
翔真 >「お前は”もの”じゃない。大事にしなきゃいけない・・・・・・女の子さ(ウインク)。」(爆)
そら >「―――――。(俯き加減に目を伏せる)」
翔真 >「あえて言うなら、それ以上に俺は”大事にしたい”と思っているぜ(笑)。」
そら >「―――――それでは、困りませんか…?」
翔真 >「困る理由が何処に有るのか聞きたいぐらいに皆無だな(唇の端を上げる)。」
響 >「そうだね。困る理由がないね〜(笑)」
そら >「・・・でも、わたし・・・は・・・」立ち上がって、じりじりと後ずさり
翔真 >「逃げ続けても解決しない、俺は絶対に諦めないし逃がすつもりも無い。それに・・・勿体無いぜ、この景色を堪能しないのは(苦笑)。」
そら >「・・・・・・知りませんよ・・・どうなっても・・・(静かに溜息)」
響 >「そのときはそのときで考えるよ(笑)」>そらさん
翔真 >「構わないさ。お前と一緒に居られるなら・・・・・・それでいい(空を見上げて微笑)。」凛に聞かれたら締め落とされそうな台詞だと自分で言ってみる(笑)
そら >「―――――――。」ぽふっ、と頭を背後の防波堤に乗せ、どこまでも続く空を見やる
雲が流れる。時が流れる。
優しい漣の反響が、海風と共に天と地を包む。
天には眩く輝く太陽。今は…今だけは、平和なひとときで。
それだけで、いい。
響 >「さて、ボクはそろそろ帰りますね。明日は地獄のバイトなので(苦笑)」
翔真 >「ああ。またな(苦笑)」
響をして「地獄」と呼ばしめるバイトとは一体?と、一瞬思わなくもなかった翔真だったが、
ここはあえて、響を見送った。
そして、後には彼自身と【そら】と、そして穏やかな風景。
翔真 >「・・・・・・もし、お前さえ構わないのなら、俺のところに来ないか?」
そら >「――――考えさせて・・・ください。まだ、どうしていいか・・・わからないから・・・」
翔真 >「あぁ、待ってるさ。(寝転がる)無理強いはしないが・・・考えてみてくれ。(明るく)正直に言えば是非来て欲しいがな(笑)。」
【そら】は即答しなかった。彼女が何を考えているのか、それは翔真にもわからない。
ただ…ややあって、彼女は口を開いた。
そら >「―――こんど…だいじなはなし、します…」
翔真 >「話す気になってくれたのが嬉しいな、ありがとよ(笑)。」
そら >「だいじな、だいじな・・・やくそくの、はなし・・・」(ゆっくりと目を閉じる)
翔真 >「大事な、話だな・・・解った、ちゃんと聞かせてもらう。」(目を閉じる)
暖かな日差しにつられて、ふたりは寝入っていた。
夕暮れ時まで、海よりの風に吹かれながら・・・。