【第24夜】
選び取られる道

<PART−09+>



謎の書物のその内容



アンゼロットは、かつてはイクスィムと共に「エル=ネイシア」と呼ばれる世界を守護していた「2柱の女神」のひとりであった。
しかし、長じるに及び対立するようになったこの2人は、世界そのものを巻き込んで騒乱を起こすに至り、
その結果守るべき世界を荒廃させ、果ては互いの肉体を滅ぼすに至ってしまう。
2人の意識は無限平行世界の狭間を漂流し、
その果てに「エル=ド=フォーラ」と呼ばれる世界の管理者である「夢見る神」に見出された。
既に侵魔たちによって「裏界」と化していた「エル=ド=フォーラ」を封じるために、
この神は夢の力を操って「既に眠りについていた別の平行世界」から形成された「結界」を用いたのだが、
その「新たなる世界」の管理者として、神クラスの力を持つ「世界の守護者」を必要としていたのだった。

余談ながら、アンゼロット以前の時代にも、この世界には「守護者」と呼ばれる亜神が代々存在していたのだが、
この時はちょうど世代交代の時期であり、空席となっていた。

漂う2人の「元・エル=ネイシアの守護者達」のうち、かの神が選んだのはアンゼロットだった。
かくして彼女は、世界そのものに直接干渉しないという制約を課せられながらも、
「自らの属する世界(エル=ネイシア)とは遠く離れ(ファー)てはいるものの、自らが守護するべき世界(ジ=アース)」という意味で
「ファー=ジ=アース」と名づけたこの世界の守護者となって、現在に至っている。
一方、打ち捨てられたイクスィムは「金色の魔王」ルー=サイファーとアスモデートに拾われた末、
六柱の巫女争奪戦において、侵魔側の指揮官としてアンゼロットとの直接対決に及んだ。
その結果、アンゼロットはイクスィムを破り、その力をもって自身の深層心理へとイクスィムを封印した。
古の呪縛は強力で、そうでもしなければ浄化は難しいと判断したからである。

しかし今、この「ファー=ジ=アース」も、侵魔たちの策謀と侵略によるもののみならず、
久しく休眠していた「意味なき意味たる旧王神」の不規則不安定な覚醒によって、その存続を大きく脅かされている。
なぜならば「夢見る神」が「エル=ド=フォーラ(裏界)」を封印する際、その触媒として「旧王神」が眠る「この世界」を用いたからである。
幸いにして現在両者は共に眠りについており、結果としてその力も拮抗しているのだが、
もし「旧王神」が完全に目覚め、独自の意思をもって動き出せば、「ファー=ジ=アース」は再び「旧王神の世界」に戻り、
実質上「エル=ド=フォーラ(裏界)」を守っている世界結界は、その存在を失いかねないのである。

よって「世界の守護者」の存在意義とは、侵魔達の阻止のみならず、かかる事態の阻止にもあるといっていい。
そしてアンゼロットは、かつての過ちを心に留めつつ、今日もその責務を務めているのである。


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