【第33夜】
救世計画、動く

<PART−16+>



横須賀WU/そのころ



逢守神社。横須賀ウィザーズユニオンを束ねる本部であるこの場所で、
総評・神代 微と、熟練のウィザード2人が顔を合わせていた。

微 >「あ、ようこそ、ソフィアさん」
ソフィア >「遅れて申し訳ありませんわ(汗)」
微 >「いえ、無理を申し上げて来ていただいたのですし、こちらこそ失礼をいたしました」
明 >「……お久しぶり」
ソフィア >「明様もお久しぶりです」
微 >(お二方にお茶出しつつ) 「明さん、娘さんはお元気ですか?」
明 >(受け取りつつ)「…お陰様で。こちらこそ、義妹(吹雪)がいつもお世話に」
微 >「いえいえ、当然のことですから。正直、うちは二人でも時々戦場ですから、四人もいると大変でしょうと思います(くすくす)」
明 >「やはり、年頃の娘が4人もいると大変なのは確かですな。……それで、どのようなご用件か?」
微 >「……ええ、その件なのですが。誉さんにも一時護衛任務の話がありましたけれど、裏界側との交渉が“水面下で”ではありますが始まっています。正確に言えば一部と、ですが」
明 >「……ふむ」
ソフィア >「ふむ…(聞きの姿勢)」
微 >「口の軽い人に話すわけには行きませんが、それとは別に協力者が必要な状況なのも事実なのです。ちなみに、その護衛の話が流れたのは、誉さんが信用できなかったわけではありません……ええ、場所の問題で(ちょっと遠い目)」
明 >「まずは、一定の信用を置いて下さった事には感謝申し上げる。その上で……」
微 >「はい、どうぞ」
明 >「裏界との交渉、との事だが……。個人的な感情で言えば、正直面白くない。というのが本音ではある」
微 >「だと思います。と、言うより、私自身も必ずしも好意からではありません……もちろん、反対と言う人も多いと思います。組織も含めて(苦笑)」
明 >「12年前の『6柱の巫女』事件を覚えておいでか? ……あの一連の事件で、叔父夫婦は誉を守って死に、当時モルモット学級の戦友たちも、40人いて最後まで生き残ったのは半数以下だった」
微 >「(無言で話を聴き中)」
明 >「無論、当時とは情勢が違うのは理解しているが……どうしても、ね(と、ここで出されたお茶を一口)」
微 >「心情としてはわかります。私も大切な人を亡くしていますので……状況が少々複雑ですが(苦笑)」なにせ異界大戦だから、あんまり詳しく話すわけにも(笑)
明 >デスヨネー(笑)「それに……もし上手く講和が進んだとしても、だ。…二度目の“魔女狩り”が起こらないとも限らん。その時、真っ先に槍玉に上がるのは…俺達異形だろう? 正直な話、ここが一番心配では」
微 >「なるほど……その点はこちらも準備しておく必要はありそうです。その上であえて申し上げたいのは、この件を進めるのは情より理である、と言うことでしょうか」
明 >「…ふむ。お聞かせいただけるかな?」
微 >「はい。身も蓋もない言い方になりますが、『裏界側が一致団結する可能性は低い』と言うことがあるのです。ルー=サイファーの全盛期でさえ、足の引っ張り合いをしていたのが裏界側ですから……人界もあまり変わらないですけれどね(苦笑)」
明 >「…三人いれば派閥が出来る、という。無理も無いお話かと(苦笑しつつ)」
微 >「前提としては……ひとつめ、冥魔とは交流の可能性は皆無。これはどうしようもありません」
明 >「うむ…(無意識に左目の傷を押さえる)」
微 >「(ちょっと気にしつつ、口には出さないまま)ふたつめ。先ほども申しましたが、魔王陣営が一致団結する事はほぼない……みっつめとして、人界と裏界との戦いは、数千年続いていても、どちらも最終的な勝敗がついていない、と言う点です」
明 >「…世界結界が有るが故に、あちらが全力を出す事もないし、こちらもあちらの本丸に攻め込む事が出来ない。…そうなるのも道理ではある」
微 >「そのためにあるのが私たちですしね。私が一番気にしているのは、裏界魔王の一部が『冥魔に食われる前に、人界を自分たちが食い散らかす』と言う行動に出ることなのです」
明 >「可能性としては十分…いや、十中八九そう動いている魔王は居るだろうな」
微 >「もう1つの危惧もあるにはあるのですが、ひとまずそれは本件とは別ですので置いておきまして……そこで逆に考えたのです。さしずめ“攻勢外交”と言うべき発想になるのですが」
明 >「攻勢外交、ねぇ。……そこで穏健派とコンタクトをとりたい、と?」
微 >「そういう事です(にっこり)裏界側に、『反冥魔・親人界』とでも言うべき派閥を作ることで、逆にそういう魔王の蠢動を抑制する……人界に出てこようとする魔王を抑制する、もしくはそういう魔王の情報が人界に流れやすいパイプを作るのが、ベターなのではないかと」
明 >「……なるほど。確かに、感情は別として有効な手段ではある」
ソフィア >「…………お話は分かりました。しかしワタクシはともかく聖王庁は揉めそうなお話ですこと(はふ)」
明 >「……あそこはなぁ(苦笑しつつ)」
微 >「御門家とて全面賛成とは行かないと思いますよ。かく言う私とて、感情だけで言えばはなはだ怪しいところではあります(苦笑)……そのため、現状では一部の人に動いていただく、と言う形になっています」
ソフィア >「古く大きい組織はその分裏界側との因縁も多く、しょうがないと言えばしょうがないのでしょうが………………」
微 >「天大寺も賛成はし難いでしょうしね。大きい組織はその分動きにくいのはあると思います」
明 >「そう言った意味では博打だろうな…」
ソフィア >「まあワタクシが話を出さなければ多少は情報が行くまで時間掛かるでしょう(しれっ)」
微 >「ご配慮感謝します(ぺこり)博打といえば博打ですが、そうそう負ける気もないですよ(くす)」
ソフィア >「というか……動いてらっしゃるのが横須賀の皆様だと、博打になるのかどうか疑問ですわ(くすくす)」
微 >「いろいろプロフェッショナルがいるのは確かですからね(笑)」
明 >「心強い事だ(ふっ)…それで、俺はどう動けば良い?」
微 >「今のところはまだ。知って置いていただく事と、ラビリンスシティへの出向依頼をお願いするかもしれません」
明 >「……了解した。ただし」
微 >「はい」
ソフィア >「…………?」
明 >「もし、その交渉を担当するものが侵魔に取り込まれた場合は…ぶん殴ってでもつれて帰る。腕の1〜2本は覚悟して貰う事になるが、宜しいか?」
微 >「かまいません。私としても人界を売る気はありませんし」
明 >「……承知した。契約成立、だな」当初表明したように、元々感情的に納得出来てるとは言い難いしねー。言外に、『俺は行動を監視するぞ』と。
ソフィア >「ああ、それはこちらも同意見ですわね」
微 >「はい、そういう事で。ひとまずは機密扱いでお願いします……必要とあれば、私自ら処断する覚悟もあります」
明 >「了解した、それを聞いて安心した。…まぁ、そうならないよう精々祈っておこう」
微 >「ソフィアさんも、状況によってはラビリンスシティに行っていただくかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」
ソフィア >「分かりましたわ、その程度でしたら呼ばれればすぐ動けるかと」
微 >「まあ、何かあった際には私が責任を取るだけですから(にこ)……それと、少々お二人にお伺いしたいのですが……ラシュディ師の一件に関して、何か気が付かれた事はありませんか?」
明 >「ラシュディ導師? ……先日の一件に関しては遣り過ぎだとは思ったが。それを抜きにすれば、真剣に人界の未来を案じておられたものと思うが」
ソフィア >「あの方のように動くのも仕方ない、とは感じましたが、更に他ということですか?」
明 >明で接触した時は、サクラと前提条件が違ったで受ける印象もまた違ったのよね(^^;
微 >「その点はまだ良いのです……いえ、先の事態は良くはないのですが(ちょっと悩み)むしろ、問題はアンゼロット城の方なのです」
ソフィア >「……ふむ?」
明 >「…お聞かせ願おうか?」
微 >「……アンゼロット様がおられた時でさえ、しばしば魔王に乗り込まれた事があるのはご存知ですか?」
明 >「人づてでは有るが」
ソフィア >「そのような話は風の噂で耳にしていますわね(頷き)」
微 >「ベタ発言ですが、レベル∞のアンゼロット様がいてもなお、セキュリティに問題のあるアンゼロット城……の主が今の所、赤羽くれはさんなのですよね」
明 >「……必然的に安全性と機密性はがた落ち、と(嘆息)」
ソフィア >「元は一ウィザードである中で頑張っておられるとは思いますが、無論無理がある所が出るのは已む無い事かと思いますわね(^^;」
微 >「ええ。くれはさんは信頼に値する方ですが、その一方でアンゼロット城の警備面やセキュリティ面はどうなのか、と」
明 >「……寧ろ問題は情報の流出と?」
ソフィア >「まあ実際先日の件でも、導師によって入れ替えが発生していますから…………あの方のレベルは規格外ではありますが」
微 >「くれはさんの身辺も不安なのですが、そこはまあ……ええ……司さんが女性を見捨てて逃げる事は想像できないのでいいんですが
明 >「(ずっこけ)」
ソフィア >「(ぶっ)」どこかの人を想像した(ぇ
タスク >「(物陰(障子の影?)からククッと笑みをこぼす声が聞こえつつ)」(ぉ
微 >「き、聴いてらした……(こほん)お疲れ様です、タスクさん」
タスク >「よ、御機嫌よう、微嬢。……ソフィア嬢に、明もな。本業の方で存外に時間を食っちまった」
明 >「よぅ、久しぶり」
ソフィア >「け、けほけほ、ふーふー…………た、タスク様、いらしてらっしゃったんですか」太字の時に心の中で連想したとは言えない(ぁ
タスク >「ああ。話題が一段落するのを待ってる間に、概ね話は聞かせて貰ったってトコだな」根っこは概ね間違ってないと思われます(笑)
微 >「ひとまず、お座り下さい(タスクさんにお茶出しつつ)」
タスク >帽子を取りつつ薦められた場所に座ります(笑) 「サンキュ。やっぱいい嫁さんになるぜ」
微 >「〜〜〜〜〜っ(赤面)……どうも、です」
明 >「……からかうのもほどほどにな(=≠」 真っ赤になった女性陣を見つつ(ぉ
タスク >「妬くなよ(フッ)」
ソフィア >「あらあら(^^)」他人だと微笑ましく見守る、受けである(ぁ
タスク >「で、さっきの魔王の話についちゃ、要は『敵の敵は味方』作戦ってトコか……今は下拵えと保険に必要な人員の洗い出しの段階だな」
微 >「そうなりますね。今現在はトリッシュ=シーズと言う魔王と……フール=ムール辺りが候補でしょうか」
明 >「フール=ムール、ねぇ……」 ものっそい微妙な表情。多分、過去に「エロスはほどほどにしておきたまえよ」とか言われたんだと思う(ぁ
タスク >「なるほどな……前者の線は悪くないな。協定を結ぶなら、欲望が解り易い奴の方が基本的には都合がいい」
微 >「ええ、交渉をするなら目的がはっきりしている魔王の方が楽でしょう」
ソフィア >「ラビリンスシティにも、かなり人に好意的な魔王が居ると聞きましたが…………確かルー=サイファーの派閥でしたか」
微 >「アマミ=ムツミさん、でしたか。なるほど、確かに……それでですね。あまり詳しくはないのですが、聞き及ぶ限りのお話を総合いたしますと、トリッシュ=シーズとフール=ムールにはどうやら共通点もありまして」
明 >「む?」
ソフィア >「ほう?」
微 >「この二者は人間関係、特に男女の仲を司る魔王なのですよね。つまり『人間がいなくなると存在意義がなくなる魔王』なのです」
明 >「………あー(遠い眼)」
ソフィア >「…………なるほど」
明 >「……なるほど」 ああ、そういう連中を取り込んでいけばって目論みなのね
微 >「全ての魔王と交渉できる、と考えるほど甘いつもりもありませんが、向こうにもメリットがある魔王を『好意的中立以上』に持ち込めればいいと思っています」
タスク >「あくまで人間を餌として見るなら『生かさず殺さず』……だが、逆に言えば状況が悪化しても最低限のリスクで交渉が可能な相手、とも言えるな」
ソフィア >「確かにそれならば交渉もかなりしやすいですわね、相手の要求してくるであろうことも事前に考えられますし」
明 >「なるほど。対外工作としてはそれほど間違っちゃいないな……」
微 >「ええ、そうなります。もちろん人身御供を出す気はありませんが、特に滅ぼすつもりの冥魔相手や、冥魔にプラスになる計画に反対してもらえれば十分ですし、そうした理由から私もこの計画にメリットありと踏んだのです」
タスク >「そういう事だな。俗に言うWin-Winってヤツだ。要求の目的や意図が読めれば、落とし所も探し易い」
微 >「……なので、ひとまず裏界側との交渉は担当者に進めていただくつもりではあります」
明 >「なるほど、了解した。俺自身は殴りあうしか能が無い、得意な連中に任せるさ」
ソフィア >「右に同じく、カチコミ関係なら…………(目を逸らす)」
微 >「本心で言えば、私もそちらが専門なのですよね(深々とため息)ただ、将来的に考えればそういう事もあり得るとは思います。特に反対派との戦いの可能性は否定できませんし」
タスク >「デキる奴は何処でも専門外の仕事まで期待されちまう。ある意味世知辛いトコだな(苦笑)」
微 >「あはは……本当にどうして総評やっているのか、自分でもわかりません(苦笑)。それでもできる事はするつもりですが」
タスク >「(頷く)態々呼ばれたって事は、俺達それぞれにも役割がある…或いは役割を期待される可能性があるってトコかな?」
微 >「そうですね。タスクさんにも調査をお願いするか、バックアップとしてラビリンスシティに向かっていただく可能性があります。今の所まだ未定ですが」 …あれ、トキシコの調査をタスクさんに任せるフラグ?(笑)
タスク >むぉっ、何か責任重大な予感が……まあ調査関係の役目は予想してましたが(爆)
ソフィア >て、手伝いならお任せを!(ぇ
明 >ファイトー(笑)
タスク >それは相棒フラグと……槇村香的な意味で(ぇー)
ソフィア >間違ってはいない。ただしツッコミ&お仕置は魂狩り(ぁ
明 >「まぁ、その辺りは臨機応変に。……ウィザードになってからずっと使ってるような気がするが、まぁそれは置いておく(苦笑)」
タスク >「適材適所、との併用だな。ここ(横須賀)は人員と美人に関しちゃ層が厚いしな(フッ)」
明 >
「不思議と、女性ウィザードの顔面偏差値は高めなんだよなぁ…高純度のプラーナが関係してるのかと個人的に疑っている(真顔)」(こら
微 >「情報戦になると限られてきますけどね。龍清さんにもお話をしておくべきでしょうか。お時間が合えば、ですが……」
タスク >「実力がある奴が一枚噛むのには賛成だな。状況によっちゃ、例えば一局面で反人界派への抑止力にもなるだろう。…そうなる前に、奴さんなら裏工作と交渉を挟むだろうがな」
微 >「そのあたりもお任せしたい所ですねぇ、本当なら(苦笑)」
タスク >「段取りが間に合わなきゃ、最悪一兵力を動かせるボスっつーのも頼りになるモンさ(ニッ)」
微 >「その前に対応できるように努力したいところです(苦笑)。非才の身にはつらいところですが」
タスク >「其処が微嬢のイイ所さ。自分を非才だと思ってる人間はまず慢心する事がねーしな(フッ)」
微 >「前線に出る方が、いっそ気楽なのですけどねぇ……」 しみじみ愚痴(笑)

ややあって、再び微は口を開く。

微 >「……さて、そろそろ話を戻しますね。アンゼロット城に関して最悪の状況を想定した時に、無視できない仮説を少々思いつきまして」
ソフィア >「仮説とは?」
微 >「……それは『冥魔がアンゼロット城を占拠、人界攻撃の砦として運用する』 と言う事態が発生した場合です。人間には自由に運用できなくても、冥魔クラスの力があれば、アンゼロット城の防衛システムを動かすことも可能でしょう」
明 >「……冥魔王や冥魔将クラスともなれば、その程度の知恵は回るだろうな」 って言うか、目の当たりにしたのはサクラだけど、冥魔将の差し金でグラン=オーヴィットの機能が乗っ取られた事もあったな。確かに無視できないわー……
ソフィア >「…………・ありえない話ではないですわね」
微 >「つまり『冥魔とアンゼロット城の両方を敵に回す』と言う事態が発生する可能性があるのです」
明 >「うーむ……そうなると、情報戦や電子戦に強い面子が必要になるかも知れん。知り合いの技師はどちらかと言うと箒専門だからなぁ」 コネの八雲・ヴァンスタインの事である
微 >「電子方面は私もちんぷんかんぷんで(苦笑)」
ソフィア >「同じく…………・こう、機械を物理的に破壊するなら得意なんですが」(←おい)
明 >「…もう一人、情報に強い人員のアテはあるんだが。ソイツ、典礼庁の職員だから…今回はちょいと不適切か(うぅむ)」
ソフィア >「右に同じく、カチコミ関係なら…………(目を逸らす)」
微 >「正直、アンゼロット城の件は一手打っておく必要があるとは思っているのです(困)……先のラシュディ師の一件から、そういう可能性があると言う単独事例として、皆様行動できたらお願いできますか?」
明 >「承知した」
ソフィア >「そちらも了解ですわ」
タスク >「(頷く)問題ない。佐一っちゃんの国の方も丁度落ち着いてるしな」
微 >「……ともあれ、本日の話は以上です。思うところがあるかもしれませんが、皆様にはよろしくお願いします(ふかぶか)」
明 >「了解した。何かあらばまた連絡してくれ」
ソフィア >「はい、及ばずながら力を尽くさせていただきますわ」
タスク >「ああ。美人の頼みは断れねーからな」
微 >「ありがとうございます。……ふぅ」(大きく息吐き)
明 >「…貴女には気苦労を掛けてしまうな。何時もお疲れ様、と言わせてもらおう」
ソフィア >「…………事務方などはそれこそ微力でしかありませんが、手伝えることがあればおっしゃってくださいね?」
微 >「ありがとうございます。任された以上、やれる事をやるだけですし、その時は遠慮なく(にっこり)」

という訳で、人界側のバックアップは着実に進んでいるのであった……。


PREVIOUS CHAPTER

インデックスに戻る