電脳英雑オンラインセッション・「ナイトウィザード」
箒開発史
※この設定はあくまでNWOSオリジナルのものであり、
公式の見解とは異なる事を、あらかじめお断りしておきます。
現在、ウィザード達が愛用している「箒(ウィッチブルーム)」。しかし、その歴史についてはいまひとつ解明されていない。
このコーナーは、ウィザード達の「箒」についての歴史を考察し詳解していくコーナーである。
箒の推進システム
現在知られている箒の推進システムは、飛行機に用いられているエンジンを使用した推進システムに比べてはるかに小型である。というのも、動力炉と呼ばれる部分はあるが、燃料タンクの類が存在しないからである。
これは、動力源を搭乗しているウィザードの持つ月衣の力を機械的に増幅し、その力を推進に充てているからである。かつて知られていた「箒」は特殊な力の持ち主(→転生者)か、更に魔力を付与する必要があったりしたものである。
更に、その余剰出力が魔導砲の出力やブレードのコーティングなどにも充てられ、もって「箒を用いた戦闘」が可能になっている。
しかし、その増幅器部分はあくまで魔法的に強化された機械でしかなく、根本はかつての箒と同様である為、魔力が無効化される条件(飛行禁止、ミスティフォッグ等)においてはその真価を発揮できないという欠点も存在する。
黎明期/「特別」なアイテム
かつて、「魔法」が世界にとって常識であった時代。「空を飛ぶ」という事は、魔力あるものにとっては至極普通に行われていた。
しかし、世界結界の定義と共に、「自身の力のみで空を飛ぶ」事は、選ばれた者だけが許される「特権」という事になり、普通の魔法使いたちが「空を飛ぶ」という事は、ほとんど出来なくなった。
神話上の神々はむろんのこと、使徒(天使とも呼ばれていた)や吸血鬼といったものたちが伝承の類に頻繁に現れるのは主にそうした事情により、その痕跡は「ユグドラシル」など、神々を起源とする遺産にも見る事が出来る。
しかしながら、魔法使いたちは「空を飛ぶ」という事を諦めはしなかった。彼らの社会…魔法社会にて人知れず培われてきた魔法技術は、やがて「何かに魔力を付与して空を飛ぶ」という能力を伝承の中に残す事で、最低限の保障を得る事が出来たのである。
俗に「イカロスの悲劇」として知られる物語は、その失敗例としての記録であると同時に、例として示される事で世界結界を補完する役割を担った説話のひとつであろう。
また、現在ウィッチィズ・サルブとして知られている魔法は、その頃に編み出された魔法技術の末裔とでもいうべきものであるが、真に力ある魔法使いが長期間用い続けた事で、永続的に飛行能力を得られるようになったものも僅かながら存在する(例:バーバ・ヤーガの箒)。
第二次大戦/秘匿兵器「箒」
20世紀、「飛行機」を開発した裁定者ライト兄弟が、道具を用いながらも「人類は空を飛ぶ事が出来る」と裁定した事で、魔法社会の人々は危機感を募らせた。それは彼らが持っていた優位のひとつ「空が飛べるという事」を、みすみす奪われるという事であったからに他ならない。
ゆえに彼らは、その力の復権を模索するようになった…魔法技術と科学技術とを融合し、もって自らの行動範囲の拡大と優位とを意図したのである。
ドクトル=エルツフェルズと呼ばれる技術者は、中でも最も偉大な経歴を残した者であった。
1930年代にドイツへと渡った彼は、第三帝国がその支配権を確立する中を要領よく立ち回り、「ドイツの卓越した技術力」を魔法技術と融合する試みを行ったのである。
その一環が「トリュプフューゲルU」と呼ばれる、空前絶後の兵器だった。それは当時明快な定義が始まった「ジェットエンジン」の裁定例の一つであったが、より画期的な点がひとつあった…魔法社会に属する者が搭乗する事で、燃料を補給する事なく運用する事が出来たのである。
この方向性は「魔術を兵器大系に適応させる」という意図を持っていた当時の第三帝国上層部の理にかなったものであり、計画がある程度の具体化をみた時点で、帝国に属するウィザードを対象とした開発計画が、極秘に発令されるに至った。
いわば、ガンナーズブルームのプロトタイプとでもいうべきトリュプフューゲルUだったが、最終的にドイツが敗戦した事で開発は完全に停止。関連資料も、もはや残っていない。
アンブラ勃興/ガンナーズブルームの発売
戦後アメリカに渡ったエルツフェルズは、冷戦期にはアンブラ社の創設に参画。技術開発における最高顧問の一角を担う立場となった。
彼が推し進めたのは、トリュプフューゲルUの更なる改良であった。ドイツの技術を引き出し、より発展させたアメリカにおいて、その計画は徐々に実を結んでいく。
かくして1960年代末、アンブラは魔法社会に向けて「機械式箒」の完成を喧伝するに至る。それが「ガンナーズブルーム」であった。飛行用のツールであり、武器でもあるこれら機械式箒の登場で、魔法使いたちはもはや自らの魔力を削って空を飛ぶ必要がなくなり、その魔力をより効果的に用いる事が出来るようになったのである。
更に間もなくして、今度は接近戦用箒として「ウィッチブレード」が開発され、これも話題となった。しかしながら、それらが持つ「明らかに機械的な外見」は、当時の魔法使いたちの間でも評価が二分した事もまた、動かしがたい事実であった。
先鋭的な層がこの新奇なる魔導具に興味を募らせる反面、保守的な層は一様に拒絶反応を示した。その頃の論争の全記録はダンガルド魔術学校のマーリン師が個人的に保管している。
しかし長ずるに及び、彼ら保守層もまた、この新たな魔導具の先進性を認めざるを得なくなっていったのである。かくして機械式箒は、単に「箒」と呼び習わされ、魔法社会のベストセラーとなった。
新世代箒の開発/「第三天使の喇叭事件」以後
その後時代は下り、1980年代。
「第三天使の喇叭事件」の発生によって、世界の行く末に危機感を覚えた魔法社会は、アンブラによる箒開発を更に後援していく事になる。世界魔術協会を媒介として様々な企業との合弁が結ばれ、数多くの箒オプションが用意される一方で、箒そのもののモデル自体も、更に細分化され始めた。
まず発表されたのは「テンペスト」であった。高速機動に特化し武装は最低限のものとなったが、それ故保守層にも歓迎されるスタイリングを達成した。実際テンペストの高速機動性能は卓越しており、現在に至るまでこれを超える機動性能をもつ箒はわずかばかりしか存在しない。
魔法戦闘をサポートする箒も開発された。それが「ウィザーズワンド」であり、箒としての性能は控えめながらも術戦用アイテムとしての最適化を推し進めたモデルとなっている。
更に、それまでにない大型の箒も開発された。「ブロンズスター」及びその派生機がそれであり、これは主に銀河連邦からの要請を受けて、彼らの技術力も盛り込んだ上で製造されたものである。
それ以外にも「ワイドショット」「グランドバンカー」「ウィングスクランダー」「ナイトサイト」「クレスケンスルーナ」「フライングギムレット」など様々な(趣味に走った)箒が試作され、この時期のラインアップはほとんど博覧会といってもいい状況であった(そのすべてがアンブラ製というあたり、当時の異様さが如実に解ろうというものである)。
中にはスタイリングやコンセプトが奇妙奇天烈だったり、性能面での問題が多かったりしたモデルも、決して少なくはない。
戦訓と改良/「関東異界大戦」前後の状況
ここに至るまで、箒各種の売り上げはおおむね好調であったが、用途とニーズが増大した事でアンブラ単独では到底供給量を補えなくなってきた事、更に魔王たちの本格的侵略活動に伴って、製品全体の質的向上が無視できなくなってきた事等の課題が生じてきた。
それらに対処すべく、アンブラはいくつかの企業とライセンス契約を結び、ノックダウン生産された製品を販売するという形を取った。後にオリジナルコンセプトの箒を数多く輩出するOH−YU社グループや、現在各企業間でコンパチブルモデルを量産している黒羽インダストリアルは、本来そのライセンス企業のひとつである。
またアンブラは、それまで数多くの雑多な開発チームで作られていた箒の製造態勢を単純化。各開発チームごとの風通しをよくした上で次世代箒の開発計画を開始した。所謂「ブルームリファインプロジェクト」である。
また、それとは別に、すべての時空間に恐怖と混乱、破壊を撒き散らした「関東異界大戦」のような特殊な状況に対応できる事をコンセプト上に置いた箒も試作された。対魔王級戦を想定した特殊モジュールを搭載可能な箒「エンジェルシード」である。
特殊モジュールは数多く用意され、全てを揃える事で、それまでの箒には類を見ない卓越した総合戦闘力を発揮できるようになったが、用途が用途ゆえ一般販売が不可能という代物でもあった。ただ、エンジェルシードの基礎設計は非常に優秀であったため、それを転用した簡易量産型箒として「ストロングホールド」が販売されている。
なお、エンジェルシードの試作機については「大戦前には既に存在していた」という説もあるが、はっきりとした事はわかっていない。
水面下の暗闘/新機軸・超越技術の投入
このように、長らくアンブラの一強(独占)時代が続いた箒業界であったが、新世紀に入ってからは別の動きが見られるようになっていく。
米国の軍産複合体・トリニティは、それまでアンブラの箒販売ネットワークに組み込まれていたが、シン=マックビーの会長就任は、この関係に重大な変化を及ぼした。
新体制となったトリニティは、それまでアンブラが販売していた箒に多少の仕様変更を施し、より安価な自社製品として発表した。それが「フェイクブルーム」である。
フェイクブルームは、性能的には従来のガンナーズブルームを決して上回るものではなかったが、それまでのモデルよりも「実銃」に近いデザインである事、そして何より購入しやすい価格帯である事が最大の武器であった。また、軍関連の流通経路をトリニティに依存していたアンブラは、そのほとんど全てを失い、一転して苦境に立たされる事となった。
そのため、アンブラはトリニティと法廷で争う一方、ブルームリファインプロジェクトを始めとする諸計画の暫定的総決算として、安価かつ高性能な箒の開発に邁進して行く。
ガンナーズブルームとウィッチブレードの後継機として、これらの機種には続番「U」が付与される事になった。これに伴い、アンブラはユーザー向けに代替される旧製品のアップグレードキャンペーンを行い、また当時販売されていた旧製品の値下げをも断行。これは「ユーザーフレンドリーな姿勢」としておおむね歓迎された。
一方、トリニティも「アンブラの箒市場独占」を法廷で逆に糾弾。市場の自由化を提唱しつつ、アンブラの手によらない独自の技術を模索していく。その到達点のひとつが「ライオット=ゼロ」に搭載された「CA(チェンジマイズアーマー)システム」である。
これは素体となる箒に、いくつか用意されたCAを装備、更に戦場で臨機応変に組み替える事で、多用途に適用できるとしたものである。
これら各用途型は、従来のアンブラ製箒に比べて総合性能・汎用性・保守性・生産性のすべてにおいて上回っていたため、前述機を量産化したモデル「ライオット」はかなりの支持を受けた。
このコンセプトは更に追求され、第2弾として「ドラゴンウィング」が送り出された。また他社においても、オカジマ技研開発の「キバ」やOH−YU社グループの「凱竜」におけるオプション展開に、CAシステムの影響を見る事が出来る。
マジカルウォーフェア後/群雄割拠
アンブラとトリニティの間で続いていた法廷闘争は、その後ドクトル=エルツフェルズがアンブラを退社し、箒の推進機構に関する基礎技術を自由化する事で、一応の決着を見た。
この時点で、それまでアンブラやトリニティの下でノックダウン生産をしていた各企業は、ここぞとばかりに独自開発の箒をリリースしていく事になる。
OH−YU社グループは独自技術も取り入れた先鋭的な「凱竜」を開発。水中行動用箒オプションの開発を続けていた日本ブレイブ重工は「デルフィーヌ」シリーズをもって、海洋国家のウィザード達に支持された。また、自動車の開発で評価を得ていたSUZUBUKIも、「ウッドストック」を始めとして、個性的な箒を次々リリースしていく。
トリニティもまた、新世代のパワーアシスト機能「スーパーチャージャー」を搭載した「ディカルティーダ」を開発。「ライオット」シリーズとの共同運用を提唱し、系列機を次々と開発していく。
一方、アンブラは箒業界の最古参企業として、記念モデル「ガンナーズブルームクラシック」を発売したり、旧製品ユーザー向けの「ブルーム・エクストラ・プロジェクト」を展開するなどユーザーサービスを欠かさない一方で、業界の流行を取り入れつつ次世代に通用する性能を持つ「エンジェルフェザー」や「ヴァルキュリア」といった製品を幅広くリリースし続け、更なる可能性を模索し続ける。
そして、マジカルウォーフェア終了後に欧州の有力掃除機メーカー・ミーゲ社が、アンブラとトリニティ双方の主力機の長所を取り入れた「FS.ブルーム」を引っさげて参入するに到り、箒業界は群雄割拠の様相を呈するに至った。
現在/次なる世代へ
現在、箒業界の最新の傾向は「人型箒の開発」「箒を根幹とする統合戦闘システムの構築」にある。
前者に関しては、従来でこそ機械式人造人間開発やパワードスーツ開発といった別技術からの派生でしかなかった(この時期の代表作はオカジマ技研の「ASIMO−W」や中国軍の「先行者」である)が、マジカルウォーフェア終盤に存在が発覚したアンブラの「汎用人型決戦箒」シリーズを始めとして、日本ブレイブ重工の「星辰」シリーズ、箒メジャー各社の「ブルームナイト(及びその派生機)」といった「箒の機能を優先した人型機械」たる各機種が、次々とリリースされた。
後者に関しては、OH−YU社の「魔竜(及びその試作/派生機)」、SUZUBUKIの「G=ミッション」、試作モデルではあるがアンブラの「デスペラード」、更に簡易量産型箒として各社で大量生産されている「フライト=ストライカー(及びその派生機)」がこれにあたり、いずれも「他系列の装備との統合運用」を意図したものとなっている(くしくも、そのコンセプトはかつての「トリュプフューゲルU」の再現にもなっている点が興味深い)。
更に、ウィザード達の活躍の舞台が「超空洞」内の無限平行世界にも及ぶに至り、異世界技術をベースに開発された(とされる)箒も次々と開発されていった。アンブラの「ホワイトエクリプス」や「ナイトブラック」、ミーゲ社の「ヴァルキューレ」、オクタヘドロンの「CATブルーム」等がこれにあたる。
このように、箒の技術は日進月歩の勢いで進化し続けているのである。