【第23夜】
白と黒と翠と紅

<PART−01>



決戦・南太平洋
〜そして、その余波〜



…南太平洋、イースター島。その海域に眠る神殿建造物。


「・・・これが『節制の宝玉』ね・・・リオンの言ったとおり、かしら」

裏界で最も危険な魔王の1人、ベール=ゼファー。
彼女は今、ここで伝説の七つの宝玉のひとつ『節制の宝玉』を手に入れたところである。

「希望の宝玉の時はいろいろ邪魔が入ったけど・・・これでまた、面白そうな事が出来そうね」

現時点で裏界最強といわれる魔王は、何かの期待に満ち溢れた危険な微笑を浮かべる…

だが、意外と知られていない事実がここにある…実際のベルは「最強の魔王」ではない。
傷ついたとはいえルー=サイファーはいまだ健在、
更にその上には…引退しているとはいえ最強と言われる先帝シャイマールと、
それに準じる力を持った重鎮…「裏界6魔将」と呼ばれるものたちが君臨しているのだ。
更に、人界に干渉し続けるために無理な復活を繰り返した結果、
ベル自身の力も、昔日ほどではなくなっていた。
現に、「ディメンジョン=ガジェット」を巡る横須賀での戦いでは、人類陣営にまさかの逆襲を許し、
数多くの信奉者を失ったばかりか、切り札の精霊獣までもあっさり滅ぼされてしまっている。

そしてその過程で、ベルは認めざるを得なかった…「ディメンジョン=ガジェット」の本質とされるものは、
彼女をもってしても、まったく御する事が出来ない性質のものである…と。
だから、それに代わる力として…彼女が選んだのは「伝説の七つの宝玉」であった。

ディメンジョン=ガジェット程ではないにしても、「七つの宝玉」全ての力を手に入れる事が出来れば、
もしかすればこの「面白くない現実」を打破できるのではないか…そう考えたのだ。
だからこそ、最近のベルは人類陣営との衝突を極力避け、
不本意ながらリオン=グンタら他の裏界魔王と手を組んでまで、活動を続けていたのである。

しかし、これもまた「予期せぬ事態」に直面する事になる…。
手始めにアゼル=イヴリスを抱き込んで「希望の宝玉」を手に入れようとしたところ、
パール=クールやアニー=ハポリュウを筆頭に数多くの反発をくらい、
無駄な力を行使せざるを得なかったばかりか、肝心の宝玉の入手にも失敗してしまった。

更に、裏界6魔将たちが、先日の「双月事件」の失敗を理由に
ルー=サイファーを「追い落とした」という事実が、ベルの内心の焦りに拍車をかける。
あの作戦が失敗した理由の一端は、言うまでもなくベルである。
しかしどういう訳か、あの古老たちはそんな彼女を放置していた。
…その事が、彼女自身に対する「無言の圧力」になっていた事は否定できない。

引退したとはいえ、あの古老たちの力は強大である。
今のベルでは、もし事を構える事が出来たとして、
おそらく彼らのうち1柱相手になんとか対等に戦えるかどうか、であった。

だが、それも今日までの事…ベルの微笑みの裏には、実はそういった実情が絡んでいたのだった。

「さて、何から始めようかしら・・・」
魔王が考えを巡らせた時。その視界に現れた者たちがいる。

「…悪いがキサマには、何ひとつ始められんよ」
「なぜって…それはぁ、あなたのものじゃあないんだからぁ」
「あのー…アンゼロット様は全てをお見通しですー。
さあ、その宝玉を引き渡してくださいですー。さもないとー…」

ロンギヌス00。名塚歌流名。シェノン=ヤンディ。エヴィ=アン…
そして、彼らに付き従うウィザード達。
ベルから見れば忌々しい、世界の守護者・アンゼロットの走狗たち…「ロンギヌス」。

「よく見つけたと褒めてあげるわ。でも、その程度の数で向かってくるとは。
この私も、よくよくナメられたものよね…
ま、あの女への見せしめついでに、ちょちょっと瞬殺してあげようかしら?」

ベルがその手に魔力を溜める。彼女自身が明言するように、
一度彼女が本気を出したならば、間違いなくこの場にいる全員を倒す事は造作もない。はずだった。

(ぽぇんぷしゅう)

…だが、マヌケな効果音と共に硬直したのはむしろベルだった。
「…ちょ、ま…これって!?」
さすがの魔王も、あまりの事に狼狽を禁じ得ない。


「ベール=ゼファーの魔力が、急激に下がっています…
なんだかよくわかりませんけど、これはもしかしてチャンスかとっ!?」

エヴィ=アンの声にロンギヌス00が銃を構え、歌流名がカニアーマーの脚を開く。
シェノンや他のサポートメンバー達も、一斉に攻撃態勢に入る…。

「・・・沈め!」「カニアーマー、リミッターかいじょぉ〜・・・《蟹光線》〜♪」
「全隊、一斉射撃ですー!」
「KILL!KILL!!KILL!!!KILL!!!!KILL!!!!!」

「くっ・・・えぇいっ、ナメんじゃないわよっ!!」
無理矢理魔力をかき集めたベール=ゼファーと、ロンギヌス一同の放った魔力の激突。
だが、それは双方陣営にとって思わぬ結果をもたらす事になる。それは…!

「いやぁああっ、私の宝玉がぁっ!?」「砕け散った…だと!?」

その直後。辺り一帯は、膨大な魔力の爆発に見舞われた。
闇夜の海底が、白い輝きに染まっていく…

弓 >ぶっ… ONシナリオか〜
翔真 >アンゼの「まるっとお見通しです」と言う台詞が確か在ったが、その割にはサイモンの襲撃を予測出来なかったと言うオチが(ぁ
司 >それにしても、素直にリオンの言うことを信じちゃ駄目だというのに(笑) ある意味、詐称長官よりもたち悪いと思う(笑)
翔真 >って言うかベルって結構不幸属性持ちだと思う。柊と似合いだと言われる訳だ(爆)
アドノレ >じろーの上司だし(笑)

さて、現在の横須賀に舞台を移そう…
司は、姪の岩倉千秋と共に馬堀海岸駅前のスーパーを訪れていた。
そろそろ夜の帳が下りようかと言う時間。空には星が瞬き始め、
千秋の両手にはいっぱいの買い物籠。それは紛れもなく、いつもの光景。

千秋 >「ゴメンね、つかにい・・・買い物につき合わせちゃって」
司 >「気にしなくていい。俺も少し買っておきたいものもあったから…これで、必要なものは買い終わったかな?」
千秋 >「うむっ!材料はこれで全部揃ってるよ・・・今日はカレーだからねっ♪」
司 >「楽しみにしてる(微笑)」本当に楽しみにしててもいいんだろうか……。おととしのバレンタインでは、杏音たちと一緒にカラフルなチョコレートを作ってきたからなぁ(笑)
千秋 >「えへへ〜・・・でも、すっかり遅くなっちゃったね。微さんにおこられちゃうかも?(笑)」
司 >「そうだな。これ以上暗くなる前に、早く帰るか」
千秋 >「そうだね〜。あ、流れ星ー・・・願い事しなきゃっ><」

千秋が見たもの、それは・・・・空に輝く一条の流れ星。

司 >「お・・・」
GM >千秋は思わず両手を合わせて願い事を始める・・・ゴニョゴニョと何を言っているのやら(笑)
司 >ほほえましく見ていよう(笑)
GM >だが・・・この時、既に異変は始まっていた。千秋が願い事をしたせいだろうか、その流れ星が輝きを増している・・・というか、ぶっちゃけこっちに向かって来てる!?(笑)
司 >「なっ?!」とっさに千秋を抱えて飛びのきます!
千秋 >「ほえ、買い物袋っ・・・」気付いてませんでした(笑)
GM >散乱する食材その他。その間にも輝きはどんどん大きくなり、司と千秋の周囲を包み込むほどになっている。
司 >「くっ、間に合わないか?」一応疑似餌を宣言。千秋を抱え込んで、守ろうとする…
GM >うむ。輝きはその場を覆いつくして・・・やがて、消える。
司 >あたりを見渡して、そのあと千秋に声をかける
GM >辺りの光景に、変化はない・・・抱え込んだ腕の中には、そのままの状態の千秋が放心状態でいる。
司 >「千秋、大丈夫か?」
千秋 >「・・・ほぇ・・・?・・・つかにぃ・・・?(ふと我に返って)うん、あたしは大丈夫〜・・・今いったい何があったんだろう。確か、ぴかーってものすごく光ったような・・・?(首かしげ)」
司 >「そうか、それならよかったが…」
千秋 >「・・・って、あぁー!? カレーの食材ぃぃぃぃぃorz」目前に散乱する食材に気付いて再び放心状態(笑)
司 >「すまない。買いなおしだな…」(−−;
千秋 >「う・・・な、なんとかサルベージしよう・・・(。。)」
翔真 >良い子だ(苦笑)
司 >「そうだな。どうしても駄目なものがあったら言ってくれ。ひとっ走りして買ってくる」
千秋 >「はぁーい・・・(。。)」懸命に食材を拾い集めつつ。きっと今夜のカレーの具は、もぬすごい形になっているかも(ぇ
司 >今晩はあきらめて、一晩かけて煮溶かしてしまえば(笑)

しかし、この事はやがて2人をおそるべき運命へと導く事になる…
そして、かの流星は…地球をほぼ一周近くして、南エーゲ海に落ちていた。


「いかん。あの場所は近いぞ…騎士団総員、急げぃ!」

配下の銀十字騎士団と共に落下地点へ急いだグィード=ボルジアであったが…
現地上空には太陽ならぬ紅月が輝き、そしてその下には彼をも上回る体躯を誇る、
ギリシア彫刻のような風貌の大男がひとり立っていた。

グィード >「むぅ、あれは…遅かったか!」
大男 >「ハッハー!長きにわたる眠りより、我は今復活を果たせり!!」
グィード >「…古代神シュヴァイ! 我ら神の名において、キサマを再び封印してくれよう!」
シュヴァイ >「ほう?これはこれは…人間どもよ、我が眠りについている間どれだけ強くなったものか…見せてもらおうぞ!」
銀十字騎士 >「我らには神のご加護がついている…敵はひとりだ、恐れず進め!!」

かくして、南エーゲ海の小島もまた、激しい死闘が繰り広げられる戦場となった…。

◆ ◆ ◆

そしてほぼ同じ頃、再び日本は横須賀へと舞台を戻し、衣笠中華街近辺の住宅街。
紅月の下、1人の少年があやしげな一団に追われていた。
その一団は等しく同じ姿をし、顔に「凶」の字を描いたマスクを着用していた。
必死で逃げる少年だったが、彼我の距離は徐々に縮まる。
今しも捕まりそうになった少年の目の前に…しかし、救いの手は舞い降りた。


「おまちなさぁ〜いっ…平和な町での乱暴狼藉は、このわたしが許しませぇんっ」
少年と一団の間に立ちはだかったのは中里愛美、いや…

「愛と勇気の魔法少女…パステルエンジェル☆アユミリーア、ばびっと参上!ですぅ」

無言で戦闘態勢を整える一団。少年を逃がし、魔法のパステルステッキを構えるアユミリーア。
ここにもまた、ナイトウィザードの戦いの舞台が現出する…。

◆ ◆ ◆

さて。千秋と共に戻った司だったが…すぐさま、逢守神社からの使いに呼び出された。
奇妙な事に、いつもの広間には微や京香、そらの姿さえなく、
ただ前守護役・神代慎だけが待ち受けていた。
そして、沈痛な面持ちで慎は語る…『京香が裏界魔王に拉致されました』と。

司 >「!!」
GM >事件が起きたのは、彼女が姉の微に代わって「海開きの神事」を執り行っていたその時。下手人は「渦巻大王」カロック=フォウルとの事だ。
司 >「確か京香さんには発信機を持たせてたはずですが、反応は?」
慎 >「・・・現場に残された巫女服に残っていました。しかも厄介な事に、社に怪文書が投げ込まれていたのです。それも3通も」
司 >「便乗か…」どこが出したものですか?

3通の怪文書の差出人は、一通が犯罪結社BCCSの吸血鬼・ペドロ=フランシスコを名乗るもの。
もう一通はダゴン教団の大神官・ヴァジューを名乗るもの。
そして、無記名のものが1通…それぞれそら、臥龍学園、微で対応する事になったという。

司 >しかし、3通か……クローンを入手されてたら、助け出すまで見分けがつけられないと思われるのが痛いな(−−;
慎 >「・・・それに、気になる事がもうひとつ」
司 >「気になることですか?」
慎 >「ええ・・・伝説の大凶星ラゴールが、ここにきて輝きを増し始めているのです。もしかしたら、今回の件となんらかの関係があるやも知れません」
司 >「また事件が広がるかもしれませんね…ともあれ、俺もすぐに調査に入るつもりです」
慎 >「ええ・・・お願いします。京香の事は、とりあえず微やそらさん、学園の皆さんにお任せしましょう」
司 >「わかりました。微さんが京香さんのことに専念できるよう、他の件を片付けてきます」


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