【第21夜】
深淵の門

<PART−20>



1週間後
〜エピローグ<1>〜



さて、事件から1週間後…。


「よいしょ…っと」

巫女服の少女…真行寺巴は、逢守神社の前で旅行用鞄を肩に掛けた。
事件終結から1週間、彼女はここで旅と戦いの疲れを癒していたが、
この度漸く、鎌倉への帰還を許されたのであった。

「忘れ物は…ないよね」
自らの周囲を見渡して、独り言を呟く…4ヶ月の時間経過に関しては、
月匣内での時間経過の相違という事で、ひとまず片を付けてある。
彼女がそもそもこの地に足を踏み入れた原因…アヤカ=クローシス=ナグモの件に関しても、
絶滅社の緋室灯と共に、今日解決する予定である。
だから、巴自身が鎌倉へ戻れるのは、それからもうしばらく後という事になる。

「……それでは、行きま…すぅああぁあああっ!?」
一歩踏み出し、そして石段で足を踏み外す…このあたり、巴はやはり巴であった。

「・・・・・・・・・・・・・・・巴さん(^^;」
見送りの神代微も、さすがに苦笑せざるを得なかった。

◆ ◆ ◆

さて、この頃…ウィザードたちはどうしていただろうか?

司 >戻ってから1週間、現状の確認やら報告やらで忙しそうだ……(^^;
翔真 >方々に生存報告やら事の次第の説明やらで忙殺されているだろうな……(苦笑)
アドノレ >縄張りがどうなってるやら
GM >うむ、暫定的な報告とか、レオン博士の酒盛りとかお見送りとか(ぉぃ
翔真 >後者はともかく前者は……まぁ世話にはなったから断りはしませんけれど(苦笑)
弓 >入学式から1回も登校せずに二学期?(笑)
翔真 >柊もビックリの珍記録が(ぁ
司 >柊は……9月から半年いなくて、新学期になると1年に下ってる(笑)
柊 >「ぶえっくしょーーーーい!!」(ぁ
GM >拉致された少女たちも、療養に入っている・・・なにしろ魔王たちの侵食を受け続けたのだから、心身ともに深く傷ついているのだろう。
アドノレ >面会謝絶も一週間あればとれる?
GM >ああ、そのあたりは個人差があるね。とりあえず愛美に関しては大丈夫っぽいところだが・・・
翔真 >流石勇者と言う所か……
司 >取り急ぎの用事が無ければ、京香の様子を見に行きますけど……アヤカ・巴関連の対応になる気が
GM >では、司のシーンから始めよう・・・


「あれ、司さん!来てくれたんだ〜?」
司が病室のドアを開けると、ベッドの上には意外と元気そうな京香が。

京香 >「昨日はお姉ちゃんが来たよ。そらりんはまだだけど・・・」脇のテーブルには花とか差し入れが。
司 >「そうですか。微さんには大分心配をかけてしまったからなぁ……」
京香 >「ちゃんとお姉ちゃんに謝っとかなきゃだめだよ?わたしも人の事は言えないけどね(てへ)」
司 >「だいぶ元気が出てきたみたいだね。よかった(ニッコリ)」
京香 >「うん、まあ大丈夫・・・だと思うけど、他のみんなが心配かな。みんな、魔王たちにひどい事されてたから・・・(ちょっと表情が曇る)」
司 >「貴女もゆっくりと休んでください」頭にポフッと手を置いてなでなで
京香 >「うん・・・すごーく疲れちゃったから・・・もう一週間はゆっくりと寝てたいような(笑)」
司 >「それもけっこうですが……こういうものも預かってきてますので」補習用のプリントの束(ぇ
京香 >「んもう、勘弁してよぉ〜!(笑)」
司 >「オレも手伝いますから……早く帰ってきてくださいね(ニッコリ)」
京香 >「はーい(笑)・・・(ころん、と寝たまま向こうを向く)」
司 >「結局、あいつらの最終的な目的はなんだったのやら……」
京香 >「・・・あいつら、わたし達の魂を搾り取って、何かをするのが目的だったみたい・・・どんな目的かは、わからないけど・・・ね」
GM >京香の肩が、僅かに震えている。捕らえられていた間、彼女がどんな目にあわされていたかはついに明らかにされなかったが・・・知らないほうがよいのかもしれない。
司 >「魂を……」ベットの脇に椅子を移動させて、向こうを向いてる京香の髪の毛を梳くように頭をなでましょう
京香 >「・・・あと、そらりんに会ったらよろしくね・・・?」
司 >「わかりました。京香さんはゆっくりと休んでいてくださいね」安心させるようになでつつ、寝るまでそばについていてあげよう……
GM >すると、京香はやがて寝息を立て始める。やはり、蓄積されたダメージがまだまだ残っているようだ。
司 >「(やはり空元気だったか……)」小さく溜息
GM >ちなみに、他のメンバーを見てみると・・・可憐がいまだ意識不明、千郷も面会謝絶。愛美はリハビリ中、つかさはとっくに退院。ナターシャは京香同様、療養中となっている。
司 >なるほど……なら、ナターシャも見舞っておいて、何かほしいものがないかを聞いて持ってきたりしておこう。日本だと知り合いいないだろうし(^^;
GM >うむ。これらの報告は、逐次救出に関わった各メンバーに回るので、各自共通認識として持っててかまわない。

司 >まだ、病院に残ってるメンバーがいるし、一応警備を厚くしてもらっておこう……

司が出て行った後、眠ったと思われた京香が目を開き…呟いた。
「…もう…人に優しいのはいいけど、女の子の気持ちも分かってよね…」
その頬には、人知れずひっそり流した涙の跡があった。

◆ ◆ ◆

アドノレが戻ってきたのは、いつもの寝ぐら。
1週間を様々な工作に走り回っていたアドノレには、久方ぶりの帰還になる。
…そこでは、配下のいめやぬこが、主の帰還を待ちわびていた。

アドノレ >「随分と時が過ぎたと聞いておったが、息災であったか。手を貸してくれた者達に礼を言わねばならんな」
GM >アドノレが戻ってくると、同胞たちは次々と擦り寄ってくる。まさにカリスマ(笑)
アドノレ >「我が僕たちが無事であったなら、後は縄張りの確認か」
GM >壁には、いろいろとメモが残っている・・・たまりもたまったり、4ヶ月分(ぁ
アドノレ >緊急の物を拾い出してみますと
GM >その多くが『ワンちゃんネコちゃんにご飯のおすそ分けをしました 摩耶』というものだ。どうやら付近の事件などは、学園生あるいは皇子・ソルトで対処できるものが大半だったようだ。
アドノレ >急ぎが無ければ縄張りを回って「アドノレ参上」と世間にしらしめ(笑)こそこそと愛美のとこに面会に行くか
GM >では、司と入れ替わりの形で病院だね…愛美は病室ではなく、売店にいるようだ。
司 >く・・・(笑)
アドノレ >「あぶないあぶない司に見つかるところであった」
愛美 >「・・・・・・(焼きそばパン購入中)」ピンクと白の縦縞パジャマ〜('-'*)
アドノレ >「もう歩き回っておるのか」


「・・・ひゃわ!?あ、アドノレせんぱいっ(//ヮ//)」

アドノレ >「うむ。恐れおののけ、それこそ俺様に対する賞賛の声よ」
愛美 >「・・・・・・・・・せんぱいったら、もぅ(//ー//)」
アドノレ >「随分と厄介なのに目を付けられたな。これに懲りたら少しは自重するが良いぞ」
GM >こころなしか、アドノレに向ける眼差しは色っぽいような・・・?(ぇ
アドノレ >「ん?」
愛美 >「・・・せんぱい・・・そのことで、実はだいじなお話がありますっ」
アドノレ >「場所を変えるか」
愛美 >「・・・・・・・・ぁ、はいっ(あわあわ・・・こてん☆)」
アドノレ >愛美を小脇に抱えて場所移動・・・屋上とかあるかな?
GM >素直に抱えられると…じつにあやしい絵面だっ(ぁ
アドノレ >誘拐犯と娘さん(笑)
GM >ちなみに場所なら屋上でも、院内でどこか人気のない場所でも(笑)
アドノレ >人気の無いところで、さるのスロット変更・ゾーンジェネレイター
GM >そして、愛美は移動中アドノレから目をそらさない(ぉ
アドノレ >「さて、これで人目を気にせず話せるぞ。泣こうが喚こうが助けは来ぬ」(ニヤソ)
愛美 >「・・・・・・わかってます(//ー//)」おろしてもらって
アドノレ >「では、話してみろ。特別に聞いてやる」
愛美 >「ぢつはですね、せんぱい・・・その、あの・・・・・・(しどろもどろ)・・・(すーはー、すーはー)・・・・ではっ、せんぱい・・・(真顔)」

「・・・・・・・・・・・わたしを、せんぱいの下僕にしてくださいっ」

アドノレ >目が点になる
愛美 >「・・・・・・・・おかしかった、ですか?(上目遣い)」
アドノレ >「何を言い出すかと思えば。どうしてそのように考えたのか途中経過も聞きたいところだ」
愛美 >「その・・・わたし、今回の事で・・・いろいろあって・・・・・・(顔真っ赤)・・・」
アドノレ >「基本的には、来る者拒まず去る者捕縛が俺様流なのだが偶には例外も有る」
愛美 >「・・・・・・・・でも、わたし・・・せんぱい以外のモノになりたくなくて・・・それに、わたしにはもう・・・家も家族も・・・魔王たちの攻撃で・・・・・・みんな・・・(目を伏せ声が震えて)」
アドノレ >ん〜と、元からそういう経歴なのか事件で犠牲となったのかどうなんでしょ?
GM >ああ、第20夜と平行でクロスオーバー「横須賀地獄変」があったよね。ファラゾナは参戦してなかったけど・・・愛美の家族は、その時の魔王大侵攻で犠牲になったという事だ。ちなみに愛美自身もずっと拉致されてたから、この事はつい最近まで知らされていなかったようだ。
アドノレ >「一つハッキリさせて置きたい事がある」
愛美 >「・・・・・・・・・・・・・・・・(こくり)」
アドノレ >「俺様はお主を気に入っておるから自らのモノとして抱え込むことには何の問題も無い」
愛美 >「・・・・・・・・・・・・(//ー//)」こくり
アドノレ >「だが、それは大事に守られる立場で満足できるか。それとも俺様の覇道(?)について来るつもりなのか」
愛美 >「・・・・・・・・・・・・・・・・あんな魔王なんかに・・・汚されるんだって事考えたら・・・」
アドノレ >「その道の者達の言葉で言えば観賞用と実用は別に用意するというやつだな」
弓 >うわ、正直だ……悪の幹部には一人くらい綺麗どころがほしいよねぇ、うんうん(笑)
GM >ペットのポチという立ち位置かもしれないが(笑)
翔真 >黒ヒョウじゃないんですか(笑)
アドノレ >「己の物を他人にどうこうされるのは好かぬから、その辺の心配は要らぬが」
愛美 >「・・・・・・・・・・・・・・・せんぱいがお望みなら、わたしは・・・もう、なんでもできますっ(真顔)」
アドノレ >「ただの人として好いた俺様の傍にあるつもりか、それとも生死を共にする道具となって傍らにあるつもりかと聞きなおすか」
愛美 >「・・・・・・わたしの力でどこまでがんばれるかは分からないけれど・・・出来るなら、今まで以上にせんぱいの力になりたいです。そして・・・そうなれるよう、もっと強くなりたい・・・です」
アドノレ >「もしも俺様と死線を潜り抜けるつもりなら覚悟してもらう。護るべきモノとお主を秤に掛ける事になった場合、お主は後回しになる。もっとも大事で何よりも優先されるという事は金輪際無くなる」
愛美 >「・・・・・・・・・・・・・・・護るべきモノ・・・」
アドノレ >「他人に背を預けて構わぬという事は、相手に自分と同等以上の働きを求めるか相手の為に死ねるかという事」
愛美 >「・・・・・・・・・・・・・・・相手のために、死ねるか・・・という事・・・」
アドノレ >「いかなる状況でも生還するつもりの俺様なれば自らと同じ強さを求める。何より強いと思うならそれをカバーするのは二の次という事だな。誰よりも大事にされたい・・・と思うなら人として財宝を愛でるように愛でられることを選ぶべきだ」
愛美 >「でも、今のままだと何も変わらない・・・せんぱいを好きなだけのわたしじゃダメだって事が、やっとわかったんです」
アドノレ >「女として傍に立つのか、半身となるべく修練をつむのか回答や如何に」
愛美 >「わたしを下僕にしてくださるなら・・・一生懸命頑張って、強くなりますっ」
アドノレ >「俺様にとっての一番重要なものでなくて構わぬと言うのだな?」
愛美 >「今のまま、何も変わらないよりも・・・わたしはせんぱいに、すべてを捧げますっ」

愛美はパジャマの胸元を、自ら引き裂いた。
控えめだが、確かに育ちつつある膨らみが半ば露になる。
そしてその首筋は、よりはっきりと…少女は今、最愛の人を正面から見据えていた。

アドノレ >「よかろう。愛美。お前の血の一滴から髪の毛のひとすじに至るまで総て我が物とする」
愛美 >「・・・はい。せんぱい・・・・・・・・・・アドノレさまっ!」
アドノレ >一番大事なものと言われて自分自身を考えに入れる人は少ない・・・というかナルじゃないと入れない
弓 >しかし、そこで自分の命を勘定に入れられるかどうかは、大きな違いですにゃ(笑)
アドノレ >「だがそなたを手折るのは傷が癒えてからにするとしよう。俺様は微妙に完ぺき主義者だからな(そっと首筋に接吻して牙の跡を残し服を元通りに)・・・では結界を閉じるぞ?」
愛美 >「はい・・・(にっこり)」
弓 >うーむ、あゆみんも思い切った行動にでたのう・・・
アドノレ >あとは京香に、元気になったら司の面白いネタを見せてやるので早く全快するようにとか妙な激励を裏で
司 >ごすっ(デコをテーブルに打ち付けた)
翔真 >アドノレ オチを忘れず(ぁ

かくして中里愛美は、アドノレとの「変わらない関係」から、
勇気をふるって、一歩前に踏み出す。
それがどんな結果をもたらすかは、まだ誰にも分からないが…
ともあれその時。彼女は、幸せな顔をしていた。それだけは間違いない…

…そこ、「道を踏み外した」とか言っちゃダメだぞ!(笑)

◆ ◆ ◆

同じ頃、同じく横須賀総合病院の一室。
ここには、事件で誘拐されたウィザードの1人であるナターシャが、療養生活を続けていた。

隣のベッドには、昨日まで栗色の髪の明るい少女がいたのだが、今は誰もいない。
ひとりきりの異国の病室で、ナターシャは溜息をつく…。

誘拐される直前、無意識に危険を感じた彼女は…とっさに、自らの意識を夢界へと逃した。
それゆえ、彼女には双子魔王による拷問の後遺症が、ほとんど残らなかった…
…が、体力面での消耗は、また別の問題である。


『まだまだだな・・・わたし』
母国の言葉で、そっと呟き…『ルームメイト』の事を思い出す。
ナターシャよりもずっと年上で、ずっと大きい少女…厳神つかさ。
医師たちにも元気に接し、体力の回復も早かった事から、昨日『自主的に』退院していったのだった。

だが、ナターシャは知っている…あの『ルームメイト』が、深夜人知れず悪夢にうなされていた事を。
囚われていた間、最も激しく双子魔王に抵抗したがために、
その心には他の5人よりも、大きく深い傷が刻まれていたのだろう。

それでも、彼女は戦場に戻っていった。それがいつもの事なのだろうが、あくまで元気に。
それに引き換え、自分はここで何をしているのか…責める者がいない事は、分かっている。
現に先頃訪れた、あの少女と同じ名を持つ青年もそうだった。
彼らは、ナターシャにはとても優しかった。
だからこそ、ナターシャは自分の『弱さ』を自問せざるを得ない…

その時。彼女の0−Phoneに、新しいメールが入った。
エレーナ=ツヴァイト、金蓮、ガウリ、御門霧花…
かつての事件で関係した「ともだち」からは、
ナターシャを慰め、また元気付けるメールが届いている。
唯一、真行寺望からは来ていないが…イノセントである以上、是非もない話である。

メールの送り主は、誰あろうつかさだった…
実にお粗末なスペリングかつ強引な文法だったが、それは確かにロシア語で書かれていた。


『がんばれ、ナターシャ ボクも負けない
いつか、ともに闘おう』

…夢使いの成長は、その外見以上に内面に作用する。
ナターシャの瞳に、もう涙はなかった。


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