【外伝・第1章】
惨劇が残したもの
<PART−21>
希望のための贄として…
楠ヶ浦学園の地下研究所探索を終わったウィザード達は、その足で「MonAmi」へと足を運んだ。
おやっさん:「どうしたね…特別閉店を願い出るとは?」
怜:「……あの地下で、拾い物をしたんですよ」
やよい:「拾い物…?」
智律:「…ごめんなさいです。でも、これは本当に大切な事だと思うですから…。」
やよい:「重要な事が判明したのですわね…?」
尽:ビデオを取り出して…「前回の探索で…こんなものを見つけまして…」VHSテープをおやっさんに渡す(笑)
おやっさん:「構わんさ…で、それを再生すればいいのかな?」
真琴:「ええ、ここなら安全でしょうから…」
怜:こく、と頷いて「あとで、あの場に何があったかきちんと報告します。まずは、見てもらえますか?」>おやっさん
おやっさん:「承知した…」
尽:智律君と真琴君は基本的に閉め出します〜 のぞきたいならこっそりとお願いします(笑)>真琴君、智律君
真琴:ちぇー(笑)了解です
智律:……それは、自分の部屋にある秘密の入り口(爆)から侵入するぞ(爆)
真琴:その後ろからこっそり&黙って(笑)
尽:よろしく(笑)<こっそり
智律:「………抜き足差し足…。あ、あぅぅぅぅ…!?」
真琴:智君が覗き始めた辺りで顔を出す「こんなとこがあったんですか(くす)」>智君
智律:「…ぅぅぅ、頭ぶつけたです…。」
尽:あ、テープのタイトル見せますけど、何かありませんか?>おやっさん
おやっさん:「ふむ…(険しい表情)…尽君。」
尽:「はい…。 智律や真琴君には知らせてません。」
おやっさん:「智律君たちに見せないのは…おそらくだが、正解かもしれないぞ。」
尽:「俺もそう思います。」<正解
GM:それだけ言うと、おやっさんは…完全防備された店内で、尽から受け取ったビデオテープを…デッキに入れる。
怜:「俺はいても良いんですね?」淡々と>おやっさん
尽:「……無理矢理来たくせに(苦笑)」ぼそっと<俺はいても良いんですね
怜:「……」無言でどがっと脛の弁慶に蹴りw
おやっさん:「見た後で…怒りを抑えきれるならね。正直…ろくな内容ではあるまい」
GM:撮影は、どうやらビデオカメラでなされたらしい…15年前らしく、その画質は今とは比べるべくもないが、映し出されているのは…あのP−AREA、そして巨大な炉心。
怜:「……開始か」頭を実験モードにスイッチ
尽:「……」ビデオに見入る。
智律:「は、はぅ…。ビデオが始まっちゃうです…。(いそいで皆の後ろに移動)」
真琴:更に後ろからこそこそ(笑)
GM:その周囲には数多くの技術者が動き回り…階段の下では、2人の科学者が1人の少女を連れてきているのが見える。
尽:少女をよく見てみます。
怜:少女の顔と……科学者の顔も観察します。
GM:その少女の着ている制服、そして容貌…ほぼ間違いなく「杉崎 沙弥」であろう。2人の科学者については…少なくともその中に、杉崎博士はいないね。
怜:「……楠ヶ浦の制服、か」じっと観察
尽:「…・・そうだな。」<制服
GM:2人の白衣の科学者達の後ろには、これまた別の、背広姿の科学者がいて…困惑する少女をせきたてるようにしている。
真琴:「あれが…本当の…・・」少女と二人の博士を良く憶えておく
智律:「……………。」(真っ白になるまで手を握り締めている)
尽:後ろの二人には、ビデオに集中してて気付かない〜と(笑)
怜:背広の科学者の顔に見覚えは?見覚えがないのならばその顔を記憶しておきます。
GM:いや、怜には初めて見る顔だね…何度かの押し問答の末、少女は着ているものをすべて脱がされ、追い立てられるようにしてあの炉心へと歩かされる。
尽:「…そこまでするのか…・・」<追い立てる
真琴:「……(ぎりっ)」歯を喰い締める…・・
GM:泣きそうな顔で、身を縮めながら炉心の、あのハッチの中へ少女が身を滑り込ませると…3人の科学者は、少女の手足を拘束。その身体じゅうに、あのコードやチューブを、直に繋いでいく。
怜:「……直接繋ぐのか……」ぼそっと
尽:「…・・」よく見ておこう。過去に起きたことを覚えておく為に。
怜:確認、音声は聞こえるのでしょうか?
GM:ここまでは、カメラは遠くから写していたのでおぼろげにしか音声は聞こえないけど…ここから、カメラは炉心の少女に近づき、彼女を中心に写し始めるね。
真琴:「……・」
怜:「……」集中開始。画像も音声も全部記憶するつもりでいます。メモは……取らないで。
沙弥:「あの…ぅ、こんなので、ほんとうに…?」 |
尽:「…・・適任…か。」ぼそっ
真琴:「……表沙汰…・数名の暴走…・」口の中だけで呟く
怜:「……(あの内容の実験で生き残ったからと言いたいのか?)」
GM:身を守るものもない少女は、3人のやりとりをおそるおそる、上目遣いで見ている…。
白衣の科学者A:「そうだな…実験に成功したという既成事実さえ出来てしまえば、上層部も他に適任者がいないという事を理解してくれるだろう」 |
怜:「……既成事実……?ということは抜け駆けでやったということか……?」呟き
智律:「……………くっ…、何であんな酷い事が出来るですか…。」
真琴:「……きっと…心がどこか欠けているのでしょう…」感情のこもらない声で、小さく
怜:「……その前に何人か、いや、何人も脳味噌フライにしていやがったのか……」目つきが厳しくなる
尽:「落ち着け…」
直後、緑色の液体がハッチの中に満たされ…周囲の機材が、巨大な駆動音とともに稼動を始める。
その瞬間…少女は身体が引き裂けんばかりに引きつり、のたうち始める…
しかし、手足を拘束されているために、それ以上の動きが出来ない。
怜:「……医療系の人体実験でもここまではやらねえだろうな……」ぼそりと
尽:「………」画面の様子をじっと見る。
悪夢を振り払おうとするかのようにかぶりを振り、もし出来るのなら…
きっと彼女は、頭を抱えて転げまわりたかったに違いない。
しかも、途中から…内部のスピーカーが入ったのか、少女が激しく苦悶するその声までが聞こえ始める…
「ぁ…ぅあぁ…ぎゃあっ…はぁっ、ぁあぁあ…やぁあ、いっ、いだぁああぁああ…っ…!!」
尽:「…・・」音声を聞いても、まだ画面を見続ける。
怜:「……」画面の様子に集中
智律:「ぐっ………!(もう我慢が出来ないとでも言うかのようにぶるぶると震えだす…。)」
真琴:後ろから抱きしめる…「落ち着いて…・」<震え始める>智律
智律:「!!!! あ、あぅぅぅ…、真琴さん…!? でもでも、だって…!沙弥さんがあんなに苦しんでいるのに…!」
「っ…もぉっ、やぁあ…がはぁあぁああ…っ…やめぇっ、やめぇぇ…くはぁぁ…!」
沙弥の全身から月衣の、そしてプラーナの激しい輝きが漏れ…それらが炉心に容赦なく吸い上げられていく。
生命そのものをえぐり取られる苦痛にさいなまれ、少女は泣き叫び続ける…
真琴:「落ち着いて…あれは15年前に起こってしまった事…『今』じゃない…」自分に言い聞かせるように>智律
智律:「あぅ…。あぅぅぅぅぅぅ…。そうですけど…。けど…。(しゅんとなって…)」
怜:「……」音声聞こえてきてもここは感情シャットアウト…………画面内に変化がないかどうかに集中
尽:「やっていることは…エミュレイターと同じだッ…」握り拳を強く握りながら…画面からは目を離さない。
怜:「……(落ち着け俺……)」
全身の毛細血管が引き裂け、液体が生黒く変色…苦痛にさいなまれつつも、
沙弥はなんとか正面のカメラに向かって…許しを請うように眼差しを送る。
それも…断続的に、決して長くは続かない…
白衣の科学者A:「やはり、これは素晴らしい数値だ…」 背広の科学者:「当然ですよ。彼女はそもそも【人間】ではない…こういう事のために作られたモノに過ぎないのだから」 白衣の科学者B:「なるほど。代わりを作れば…消耗しても問題はないわけですな」 背広の科学者:「そう…そのあたりは、私がやっておきましょう。彼女の生殖細胞さえいただければ、同じようなモノなど何人でも作って差し上げますとも?」 沙弥:「ぅ…………ゅるし…てぇ……・・」 |
尽:「……消耗……」
怜:「……モノ?」
真琴:「…ごめんなさい…えらそうな事いってますが……私も感情を抑えるのがやっとなんです……」抱きしめた手がほんの少し震えている…>智律君
智律:「……ううん、皆が止めたのに、自分の意思で見ると決めた以上、僕は何があってもこれを見続けなくちゃならないんです…。取り乱してごめんなさいです…。」>真琴さん
真琴:「…智律君は強いですね……・『私』には…・」
智律:「……沙弥さんと『皆さん』に約束したですから…。」>真琴さん
真琴:「…そうですね……そうでした……」頷く…何か決意したように>智律
白衣の科学者B:「期待してますよ、プロフェッサー…さて、我等が女神様はそろそろ限界のようだな」 白衣の科学者A:「所詮は子供か…まあいい。絶命しない程度で止めておこう。杉崎博士に知れたら厄介だからな」 白衣の科学者B:「わかった…今回の実験はここまでだ。パワーカット!」 |
智律:「…プロフェッサー…? もしかして…。ううん、断定はよくないです…。」
怜:「……プロフェッサー?」これは後で思い返そうと心に止めて。
尽:「…・・」3博士の顔はよく見ておきます。画面に映る限り。
真琴:三人の顔を良く覚えておきます…
怜:「……」杉崎博士には内緒で行われたと……記憶しておこう。
尽:「杉崎博士が…これを知って黙ってるはずがないさ…」ぼそっと
怜:「……伝えるつもり?」>尽
尽:「………・いや…・・今更…」首を振って
怜:「伝える意思があるように聞こえた」画面を見続けながら>尽
尽:「博士の替わりに…せめて俺が怒りを覚えてるだけさ…(ははっ)」画面から目は離さずに。>怜
炉心のパワーが落とされ、液体を抜かれて開放されたハッチの内側…全裸の沙弥を、カメラは容赦なく写す。
彼女の人権など、なきがものといわんばかりに。
今にも昏倒しそうになりながら、朦朧としている沙弥に、3人の科学者は近づき…ワイヤー・チューブ類を外す。
手足の拘束を解かれたものの、科学者の一人に引っ張られて、やっと立っているに過ぎない沙弥…
沙弥:「…………………・ぁ………………ぅ…」 背広の科学者:「何ですか…そのザマは。平和な生活で能力が落ちでもしたのですか?」 沙弥:「……・ぁあ…・・ごっ、ごめんな…さいっ…」 白衣の科学者B:「…まぁいい。次はもっとましな結果を期待するよ。平和…それは君が最も望んだもののはずなんだから」 沙弥:「……・はぃ……わかり、ました…だから、おとうさんには……っ」 白衣の科学者A:「余計な事は心配しなくていい…Dの中枢として出来る事をする、それだけを考えるんだな…それは必ず、世界を救う事に繋がるのだから」 沙弥:「………………(こく)」 |
怜:「……平和……か」微妙に歪んだ笑みを浮かべて呟き
智律:「……平和という甘言をもって、一人の少女を辱め、己の私欲を満たそうとしていたのですか…。そんなこと…、そんなこと、絶対に許せるはずが無いです…!」
真琴:「余計なこと…血の繋がりは無くとも親子の情を余計な事と言う輩に平和などと言う言葉を…」
少女の頬から零れ落ちるのは、あの炉心の液体か…それとも…
ともかく沙弥は、科学者達に引きずられるようにして、部屋から連れて行かれる…
だが、それはまだ始まりに過ぎなかった。すぐにまた、おそらくは数日後の…同じ状況がまた映し出される。
智律:「…まだ、なんですか…!」
怜:「……上層部に、事実として見せるためのものだったのか……」呟き
何度も………何度も………何度でも……画面の少女に苦痛が与えられ、最後は瀕死の状態での実験停止。
日を追うごとに…少女は徐々に、徐々にだが衰弱していく…。
それでも彼女はただ、諾々と3人に従い…同じ目にあわされ続ける。
セツが残した写真での、沙弥の笑顔が焼きついているだけに、
このビデオでの彼女の表情は…忘れられない…。
智律:「……既に、己の邪心しか見えていないのか、あの亡者達は…。 どうして…、どうして、こんな事を続けたのですか沙弥さんっ…!」
真琴:「……きっと…免罪符を手に入れたつもりなのでしょう…『平和を守るため』…という・・」
智律:「……ううん、それならば、彼らには少しは沙弥さんへの気遣いがあるです。……でも、あれは、沙弥さんをただの実験道具としてか見てないですよ…。」>真琴さん
怜:「(実験材料の一つにしか見えてないんだな、きっと……)」心の声
尽:「……」腕を組んで、睨むように見続ける。何かを我慢しながら。
怜:「……尽さん落ち着け……これは、過去のものだ…………思うところは、多分同じさ」そっと膝に手を。それでも、画面は見ているけど
尽:「…大丈夫さ(ははっ)」それでも画面を見る。>怜
そして…最後の記録。苦痛の中で…半ば白髪化した少女は叫んでいた。
「もぉやめてぇ…こんなのイヤっ…こんなのぉ…
もう、イヤだっていってるのに…っ…!!!!!」
「いやだよぉ…はずしてぇ…たすけてぇ…いたぁい…っ、たすけてっ、…!!……」
尽:「………・」見ておかなければならない、だから見る。
怜:「……」見続ける……感情はまだシャットダウンしたまま。
真琴:「何故・・・数多くの見知らぬ人達を守るために・・・・よく知る隣人を傷つける事ができるのか・・・」
智律:「…そんな、たいそうなものじゃあないです。 彼らは…、沙弥さんを犠牲にして…、生贄の羊にして己の私欲を満たそうとしていただけです…。」>真琴さん
真琴:「………」決して目を逸らさない…
直後実験が停止され、ぼろぼろに消耗した血塗れの少女がハッチから引きずり出されるところで…映像は終わる。
その後、画面には…ただ、砂の嵐の画面が残るだけ。
だが、最後に少女がカメラに向けた眼差しは…
それは、誰にも向ける事が出来ない怒りの現れだったのか。それとも…
尽:「・・・ふ・・・う。」椅子に深く腰掛け直し・・・目をしばし閉じる。
怜:「……」立ち上がって、二人分の水を汲んできましょう
おやっさん:「・・・・・・・・・・・・・なるほど・・・」
尽:「これは・・・あの二人に見せるべきなのか・・・」ぼそっ
怜:「……」黙って、水を差し出す>尽
尽:「おう、さんきゅー・・・」水受け取りつつ>怜
怜:「……あの二人に覚悟があるなら、見せるべきだと思う」>尽
やよい:「おかわりでしたら・・・用意いたしますわね・・・」寂しく微笑み、キッチンへ。
尽:「覚悟・・・か。あの二人にも覚悟はあるだろうさ・・・・・。ただ、俺は・・・」
怜:「……怒りの方向が、間違ってしまいそうで不安?」>尽
尽:首を振って「俺は・・・真琴君と、智律が心配なだけさ。」
怜:「……俺ほど無神経じゃないからな……あの二人は」>尽
尽:「知って・・・無茶しなければいいんだが(苦笑)」
怜:「それが一番怖い」
尽:「それと・・・お前もな(ははっ)」>怜
怜:「俺のことは心配しなさんな…………(微笑)」
尽:「莫迦・・・。」軽く頭を叩く。<心配しなさんな>怜
怜:「……何年あんたと組んでいると思ってる?(苦笑)」>尽
おやっさん:「悲劇は起こり続ける・・・取り消す事は出来ずとも、極力起こらないようにする事は出来る・・・か」
尽:「・・・」黙って頷く。>おやっさん
怜:「……難しい、ですね……」>おやっさん
◆ ◆ ◆
智律:「………一つ、わかったことがあるです。」(ぽつりと)
真琴:「・・・・・何がですか?」感情のこもらない声で<一つだけ
智律:「……沙弥さんはあの事を望んでいなかった。…これだけで充分です…。」
真琴:「・・・・・・そうですね・・・・・・ええ、そうです・・」頷いて<望んでいなかった
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