そして今、やがて来るであろう未曾有の危機に対する打開策を求め、
彼らは足を踏み入れる。“魔王の街”ラビリンスシティに……
【第４０夜】
茫洋〜さらば故郷〜
＜ＰＲＯＬＯＧＵＥ＞
“魔王の街”での会見
パートナーである“最終天使”ソルティレージュこと東雲 摩耶による
謎めいた夢の啓示を受けて、行動を開始した“遠き未来の守護者”神条 皇子。
彼らは秋葉原にて、 “
かの事態が、既に彼らの予想以上に進展しているという事を知る。
そして今、やがて来るであろう未曾有の危機に対する打開策を求め、
彼らは足を踏み入れる。“魔王の街”ラビリンスシティに……
◆ ◆ ◆
“人間の因子を持つ魔王”そのウワサを辿れば、
彼らが辿り着く先は、現状においてはおおよそひとつである。
勿論そこに行き着くまでには、若干の苦労をも伴った訳だが……兎も角。
「……異界の神にその守護天使、それに“地球勇者”か。オレに一体何の用だ」
それは、臥龍迷宮での一件から帰ってきたばかりの魔王、ナイトロードであった。
「……君が“人間の魔王”か。実は、早急に確かめたい事があってね」
「にゃふぅ」と鳴き掛けた摩耶に先んじて、勇士郎が切り出す。
「……確かめたい事？」
「ああ。実は――」話し始めようとした皇子を、ナイトロードが遮った。
「“人間の魔王”……確かにオレは、そう呼ばれてはいる」
「……だが、それもごく最近からの話だ。それ以前の事は知らないが、構わんか？」
「構わないさ。寧ろそういう立場だからこそ、知っていて欲しい事なんだ」
皇子と勇士郎は、ナイトロードに打ち明けた。
“最終勇者”の事は伏せつつも、夢の啓示“七色の破滅”と“白と黒”……
それらが世界にとって、ある種差し迫った危険な状況を示しているであろうという事を。
「“七色の破滅”……か。それらしいものなら、つい最近見かけた事がある」
“人間の魔王”は、こちらも言葉を選びつつ、２人の知らない情報を打ち明ける。
「……本当か？」「何処で見たのか、教えてくれないか」
「ああ。“臥龍迷宮”のあたりでな……
どうやら数種類いたようだが、共通する事はただひとつ。
いずれも、侵魔の群を容易く駆逐する程の力を持つ存在だった」
これは臥龍迷宮を舞台とした一連の事件に含まれているのだが、
かの件にタッチしていない２人にとっては、もちろん初耳である。
「……実は、その大元と思われる存在についても、直接見る機会があった。見ただけだがな」
「見ただけ？何故だ。魔王ならば、普通にそれ以上何かしてもおかしくないだろう」
「……拒んだのだ」「拒んだ？……何が、何を？」
「魔王としての本能だ。絶え間なく“危険”を訴え続けていた……
だから、あえてその時には何もせずに、手を引いた」
「さもなくば、オレはあの“ばけもの”に単身勝ち目のない戦いを挑んだか、
あるいは即座に逃げ出していた事だろう。
……幸い、あちらも手を出しては来なかったがな」
「魔王がこうも“危険”とまで、恐怖を覚える相手……まさか」
皇子には、覚えがあった。
「……だろうな」それは、勇士郎もまた同じ事。
「ナイトロード。ひとつ、確かめたい事がある」「何だ、改まって」
内心では外れて欲しいと願いつつも、聞かざるを得ない。
「君が言う、その存在……
まさかとは思うが、【ＭＡＳＴＥＲＳ】の“杉崎 そら”なんじゃないか？」
「ああ、確かそんな名前だったな。嘘か真か“魔王どころか冥魔王すら喰う”という。
……実際見るまではただの噂だと、オレもそう思っていた」
皇子と勇士郎は、魔王の言葉に思わず顔を見合わせる。
「連中と共闘して知った事だが、最近“彼女”は《四騎士》を喰った。それも全員だ。
――魔王の立場からすれば、《四騎士》は上級の立場にある魔王。
それだけでも確かに途轍もない事だが、この話……ある種、嫌な予感すら感じさせるのだ」
「それは魔王としての勘、か」「そんなところだ」
実のところ、それは他でもない“ＭＡＳＴＥＲＳ”のウィザード達に対して、
【冥破王】Ｄ＝ガイディスが伝えてきた事とも符合するのだが、
この時点での彼ら３人＋摩耶が、そのような事などもとより知る由もない。
「それと、これはあくまでウワサに聞いた限りだが……オレと同様に“裏界魔王の力を得た人間”という存在。
この街においては、別に前例がないという訳でもないらしい」
「……本当か？」もしナイトロードの言が真とすれば、今までの前提に問題が生じる事になる。
しかし、勇士郎にも皇子にも、目前のナイトロードをおいて他に
かの“魔王にして人間”の条件を満たせる者になど、心当たりはなかった。
「ああ。しかし……それが何者なのか、そもそも真偽も疑わしい話だ。
知っているのはルー＝サイファーくらいのものだろう」
“人間の魔王”の言に、今一度顔を見合わせる２人。
引き合いに出されたのは、２人もよく知る人物。しかし、知ったのは計り知れない事実である。
果たして打てる手などあるのか、疑念はますます増す一方であったが……
少なくとも皇子にとって、次なる行き先だけははっきりしていた。
「……会いに行こう、ルー＝サイファーに。それが一番、確実性が高そうだ」
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